ほかの子と比べて、なんか顔色が悪い気がする...なんとなく元気がないかも。赤ちゃんや子どもでも、貧血ってあるのかな。
こんな症状が気になった時の、原因や受診の目安を解説します。
一般に「貧血」というと、顔色が悪い、ふらふらする、倒れるなどをイメージすると思います。ただし医学的には、血液の中の「ヘモグロビン」という濃度が低い状態を指します。
月齢や年齢によってヘモグロビンの正常値は異なりますが、生まれたての赤ちゃんは、ややヘモグロビンの濃度が高めです。
そこから、胎児のころからの赤血球が壊れて減っていくので、生後2ヶ月ころにかけて徐々に低くなっていきます。その後一度安定したあと、生後6ヶ月頃からまた減っていきます。これは母親由来の鉄が無くなっていくからです。
乳幼児で最もよく見られる貧血は、この鉄欠乏性貧血です。
母体由来の鉄がなくなる生後6ヶ月以後が多いですが、早産や低体重で生まれたお子さん(母体由来の鉄が少ないまま産まれてくるので)、母乳のみで育っているお子さんなどはもう少し早くから貧血になることもあります(ミルクと違い、母乳には鉄分が含まれていません)。
また、1歳よりも前に牛乳を飲むことも、鉄欠乏性貧血のリスクになります(牛乳には原則として鉄分が含まれていません)。
さらに思春期で月経(生理)が始まっている女子も、鉄欠乏性貧血のリスクです。
また感染症による貧血も、子どもでよく見られます。
様々なウイルス感染症(パルボウイルス、EBウイルス、肝炎ウイルスなど)がきっかけになり、一時的に骨で血液を作りづらい状態になることは、しばしば見られます。
生まれたばかりの赤ちゃんで見られる貧血というと「ABO不適合」や「Rh不適合」による貧血があります。
これは母親の血液型と、赤ちゃんの血液型との組み合わせによって、赤ちゃんの赤血球が破壊されてしまい、貧血になるものです。
子どもが貧血になる原因は感染症が多いですが、肝臓や腎臓の病気、甲状腺の病気、白血病などの悪性腫瘍でも、貧血になることがあります。
さらに稀ですが、体の中のホルモンや酵素に異常をきたす「先天性代謝異常症」という病気でも、貧血が見られます。
具体的には、先天性代謝異常症の中の、ライソゾーム病というグループに含まれる「ゴーシェ(Gaucher)病」で貧血が見られます。
赤ちゃんのときから痙攣や発達の遅れ、肝臓や脾臓が腫れるなど様々な症状とともに貧血が見られる場合は、この病気が疑われます。
赤ちゃんや子どもが貧血になっても、初期の頃は症状が目立たず、気づきにくいことも多いです。
顔色が悪い、元気がない、哺乳の意欲が弱い、呼吸が荒いなどがあれば、小児科を受診しましょう。特に感染症から貧血になることもあるので、発熱が長引いてだんだん活気がなくなってくる場合も受診の目安です。
特に症状はないけれども貧血が心配、という場合もあると思います。
完全母乳育児や離乳食の進みが悪い赤ちゃんや、また毎回の月経量が多い女のお子さんはたしかに貧血のリスクなので、心配な場合は小児科に相談しましょう。必要に応じて血液検査でヘモグロビンや鉄の値を確認したり、薬で鉄を補ったりします。
参考文献:
小児症候学89 原著第2版, 東京医学社, 2018年
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