他の子と比べて、お腹が出ている気がする?お腹を痛がってるけど、ひょっとして内臓が腫れていたりするのかな...?
お腹の中や、内臓などは、外から直接見える場所ではないので、病気が隠れていないか心配になりますよね。
「内臓が腫れる」原因や、受診の目安などを解説します。
お腹が少し出ているからといって、必ずしも内臓が腫れているわけではありません。
いわゆる大人でいうところのBMIの正常範囲は、産まれてすぐから生後数ヶ月にかけてぐぐっと高くなり(最もお腹が出ていたり、肉付きがよく見える時期)、1歳〜3歳にかけてまたゆるやかに低下します(そしてまた6〜10歳以後から、大人の数値に近づいて上昇していきます)。つまり生後数ヶ月の赤ちゃんや、1歳〜3歳くらいのお子さんのお腹がぽこっと出ているように見えるのは、正常の範囲であることが多いです。
また、大人と比べると、臓器が(子どもの体重や体格に比して)大きく目立ちやすいのも、子どもの特徴です。たとえば、肝臓は、子どもは右側の肋骨の下部分に、1〜2cm程度触れても正常の大きさと判断します。脾臓も同様で、左側の肋骨の下部分に2cm程度までは触れていても、正常の範囲内です。
ただし、中には病気が隠れていることがあります。たとえば肝臓が腫れるような病気は、ウイルスによる肝炎、また細菌感染症による肝膿瘍が代表的です。
感染症からライ症候群(Reye症候群)といって、肝臓の腫れのほかに、脳症などを起こす重篤な疾患もあります。
さらに小児でも肥満や病気などによって脂肪肝が見られることがあります。生まれつき嚢胞(のうほう)といって、肝臓に余分な袋がついてしまっていることがあり、これも肝臓が大きく触れる原因の一つです。
脾臓についても、子どもの脾臓が腫れる最も多い原因は、ウイルス感染です。EBやサイトメガロ、トキソプラズマ、ヘルペスなど様々なウイルスが原因になります。そのほか細菌感染症による脾膿瘍もあります。
子どもの肝臓や脾臓が腫れる原因は、ウイルス感染症が多いのですが、他にも珍しい原因があります。
一つは、腫瘍です。肝芽腫や神経芽細胞腫などの固形腫瘍、また白血病やリンパ腫といった悪性腫瘍や血液の疾患でも、肝臓に腫瘤ができます。
血液の病気といえば、赤血球の異常がある場合にも、脾臓が腫れることがあります(赤血球は、脾臓で処理されるためです)。もともと心臓に病気があるお子さんの場合は、心不全によって肝臓が腫れることもあります。
また生まれつき、体の様々なホルモンや酵素に異常がある「先天性代謝異常症」でも臓器が腫れることがあります。
具体的にはペルオキシソーム病、ライソゾーム病、ムコ多糖症、Wilson病などが挙げられます。
さらに成人と比べると、小児ではさらに稀ですが、膠原病(全身性エリテマトーデス、サルコイドーシスなど)は免疫機能に異常があり、全身に炎症をきたすために、体のリンパ節や臓器が腫れる病気です。
また同じく免疫機能の異常といえば「原発性免疫不全症」でも臓器が腫れることがあります。
これは、生まれつき免疫機能に異常があるために、様々な感染症にかかったり、そのために発育や発達が遅れたりする病気です。
感染症を繰り返すので、体の免疫組織の一つである脾臓が腫れたり、肝臓の機能にも異常が及んで、肝臓が腫れたりすることがあります。
子どもはそもそも、大人と比べると肝臓や脾臓が目立ちやすく、肋骨の下に触れても必ずしも異常ではありません。また1〜3歳くらいまではお腹がぽっこりと出ていても正常な範囲であることがほとんどです。
また子どもの肝臓や脾臓が腫れる原因として多いウイルス感染症については、特に治療はなく、対症療法のみです。腫れた肝臓や脾臓を小さくする薬はなく、ウイルスの勢いが弱まることで、肝臓や脾臓も時間を追ってもとの大きさに戻るのを待つしかありません。
万が一、腫れがどんどん目立ってくる場合や、その他の症状(発熱、ぐったりしている、腹痛など)がある場合は、小児科を受診しましょう。
参考文献:
小児症候学89 原著第2版, 東京医学社, 2018年
阪下和美、正常ですで終わらせない!子どものヘルス・スーパービジョン、東京医学社、2017年
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