赤ちゃんの体重が増えないと、心配になりますよね。
母乳が足りないのかな?ミルクを足したほうがいいのかな。離乳食が全然進んでないからかな...どうやったら食べてくれるんだろう。それとも、なにか怖い病気?
体重が増えづらい原因や、受診の目安などを解説します。
赤ちゃんの体重が増えない原因は、多岐にわたります。
なかにには「口腔機能発達不全症」のために、摂取が進まないケースもあります。「飲み込む」「噛む」という作業には、多くの神経や筋肉が複雑に絡んでいるため、そのどれかに障害があったり、神経や筋肉の連携がうまくいかない状態だと、うまく飲み込んだり噛んだりできない、ということになります。
また、口周りの皮膚や粘膜が、人一倍過敏な赤ちゃんや子どもも、固形物や新しい食べ物を受け入れづらいという場合もあります。母乳やミルクなど液体はよく飲んでくれたのに、離乳食がなかなか進まない赤ちゃんの中に、このようなケースが見受けられます。
嘔吐の量が病的に多いような病気も、体重が増えない原因になります。
赤ちゃんの嘔吐で最も一般的なものは「胃食道逆流症」です。赤ちゃんの胃と食道をつなぐ筋肉がゆるかったり、消化機能が未熟だったりすることから、赤ちゃんはどうしても吐き戻しの量が多い時期があります。通常は1歳ごろにかけて徐々に嘔吐の量がおさまり、また体重の増加にも影響がないことがほとんどです。
ただし一部のお子さんでは、嘔吐の量があまりに多く、体重が増えづらい原因になることもあります。もっと病的な嘔吐をきたす病気に「肥厚性幽門狭窄症」というものもあります。これは胃の出口の筋肉が極端に狭いため、飲んだ母乳やミルクを噴水のように勢いよく吐き出してしまうものです。
こうした消化管の病気以外にも、アレルギー(アレルギーのある食材が多いため、食べられる食材の種類が少なく、栄養が摂取しにくい。アレルギーの症状として嘔吐を繰り返してしまい、体重が増えない。など)や心臓の疾患(心不全など心臓の機能に異常があるため、エネルギーが過剰に消費されてしまったり、食べる意欲が減退してしまったりする。など)でも体重が増えないことがあります。
赤ちゃんの体重が増えない原因は、母乳やミルク、離乳食が十分に摂取できないから、だけではなく、消化管の病気、それ以外にも様々な疾患があります。
さらに頻度は稀ですが「先天性代謝異常症」といって、体の機能を司る様々なホルモンや酵素に異常があるため、体重が増えづらい病気のグループがあります。いろいろな疾患が含まれていますが、先天性代謝異常症で最も多い病気に「先天性甲状腺機能低下症」があります。
これは生まれつき、何らかの理由で、甲状腺から出ているホルモンの量や働きが適切でないため、体に様々な症状を引き起こす疾患です。生まれてすぐ気づかれやすい症状としては、⻩疸が長引くこと、便が出ない、臍ヘルニア(いわゆる「でべそ」)、泣き声が弱い、そして体重の増えが悪い、というものが挙げられます。
「先天性甲状腺機能低下症」は、基本的には、生まれてすぐに受ける「新生児マススクリーニング」という血液検査で発見されることが多いです。ただし病気の程度が様々なので、マススクリーニングでひっかからなかった場合でも、生後数ヶ月かけて徐々に症状が進行して発見される場合もあります。
「どれくらい体重が増えなければ、受診しなければいけないのか」という基準は、実は医学書などによってもバラツキがあります。およその目安ですが、生後1ヶ月までの新生児の赤ちゃんでは、1日あたり15g〜20gあたり増えていない場合は、一度受診を検討した方が良いでしょう。なお生後3〜4ヶ月以後からは(母子手帳の成長曲線の傾きを見てもわかるとおり)徐々に体重の増え方が緩やかになっていきます。生後6ヶ月以後は、1日あたり10〜15gの増加でも正常な範囲です。
特に病気を指摘されたことがなく、医療者からの指示がない場合は、毎日絶対に測定しないといけないわけでもありません。新生児〜生後2ヶ月頃の赤ちゃんでも、健康なら1ヶ月に1回測定し、日で割って、1日あたりの体重増加を計算すれば大丈夫です。
もちろん体重だけでなく、下記の症状も見られる場合は、小児科への受診を検討してください。
参考文献:
小児症候学89 原著第2版, 東京医学社, 2018年
先天性甲状腺機能低下症マススクリーニングガイドライン
日本歯科医学会、小児の口腔機能発達評価マニュアル
阪下和美、正常ですで終わらせない!子どものヘルス・スーパービジョン、東京医学社、2017年
改訂版乳幼児健康診査 身体診察マニュアル
小児科医と母乳育児推進
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