胃腸炎?どこからもらってきたんだろう…ミルクやおっぱいを飲ませても、すぐ吐いちゃう。何か怖い病気なの?熱も出てきた!夜だけど、すぐ病院に行ったほうがいいのかな…
色々と心配になりますよね。子どもの嘔吐の原因や、受診の目安、ホームケアなどを解説します。
嘔吐の原因には、様々なものがあります。
ぱっと思いつく代表例として、胃腸炎がありますよね。ほとんどはウイルス性の胃腸炎で、ロタ、ノロ、アデノなど名前がつくウイルスの他にも、沢山の種類のウイルスが胃腸炎を引き起こします。サルモネラやカンピロバクターなど、細菌性の胃腸炎もありますね。最初に嘔吐があり、少し遅れてから下痢や発熱といった症状がつづくことが多いです。
胃腸炎ほど頻度は高くないですが、食べ物のアレルギーによって嘔吐することもあります。乳幼児でよくみられる食物アレルギーは卵・乳・小麦です。食べた直後から、口周りや体に赤みが広がるような皮膚の症状が多いですが、中には嘔吐や下痢といった消化器の症状が、アレルギー症状として出ることもあります。
お腹の病気でいうと、腸重積(ちょうじゅうせき)という病気も嘔吐をきたします。これは、通常は1本のホースのようになっている消化管の一部が、ぐちゃぐちゃに折りたたまれてしまい、消化管の中身が適切に流れていかなくなることで、嘔吐する病気です。最初は嘔吐だけで、胃腸炎と区別がつきません。嘔吐や腹痛が時間を追うごとにどんどんひどくなる、また血便といって赤いウンチが出てくるという場合に疑います。
お腹以外に、頭の病気でも嘔吐は生じます。頭を強く打った後の脳震盪(のうしんとう)、ウイルスや細菌の感染などから引き起こされる髄膜炎、また頭に水が溜まってしまう水頭症(すいとうしょう)では、脳の圧が高くなることで、嘔吐します。
さらに意外なのは、おしっこの感染症(尿路感染症)でも嘔吐をきたすことがあります。乳幼児は、おしっこが出る出口(尿道口)と、うんちが出る出口(肛門)とが近かったり、ずっとオムツを履いていたりすることで、大人よりも尿路感染症を引き起こしやすいと言われています。はっきりしたメカニズムは明らかになっていませんが、この感染症にかかると、発熱以外にも、嘔吐がみられることがあります。
また特に生後1ヶ月以内など、早い段階で見られる嘔吐の原因も、様々なものがあります。母乳やミルクを飲んだ後に、戻してしまう「胃食道逆流症」はよくある嘔吐で、通常は治療の必要はありません。赤ちゃんの、胃と食道をつなぐ筋肉がまだゆるいことや、消化機能が未熟なために起こる嘔吐だからです。
ただし、嘔吐にかなり勢いがあり、噴水状になったり、嘔吐のせいで体重が増えない等の場合は、幽門狭窄症や腸回転異常症といった、重大な病気を疑うこともあります。それぞれ、胃の筋肉や、腸の構造が生まれつき異常であることから、嘔吐をきたしてしまう病気です。
加えて、便が全然出ない・出にくいという場合は、Hirschsprung病(ヒルシュスプルング病)という腸の神経の病気を疑うこともあります。
上記以外にも、特に生まれてすぐ、あるいは生後数ヶ月以内にわかることが多い嘔吐の原因として、先天性代謝異常症という病気のグループがあります。
これは体の中の様々なホルモンや酵素が正常に働かないため、嘔吐をはじめ、体重が増えない、痙攣する、発達が遅れるなどの全身の症状が出るような病気です。具体的には尿素サイクル異常症、有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症、先天性副腎過形成症といった病気があります。
とくに先天性副腎過形成症は、副腎という、腎臓の上の小さな臓器に異常があります。副腎は様々なホルモンを作っているため、症状も多岐にわたります。男性ホルモンが過剰になることで、染色体としては女の子なのに、外性器が男の子のようになってしまう症状が代表的です。かなり毛深くなったり、身長が伸びづらくなったり、またウイルスなどの感染症にかかった際に、意識障害など重い症状を起こしたりする副腎クリーゼにも注意が必要です。
先天性副腎過形成症は、通常、生まれたときの外性器の様子や、また新生児マススクリーニングという血液検査で、生まれてすぐ発見されることが多いです。ただし全てのタイプの先天性副腎過形成症がスクリーニングできるわけではないので、出生後少したって、自宅で症状に気づいて発覚することもあります。
嘔吐だけで、緊急に受診しなければいけないケースはほとんどありません。多くはウイルス性の胃腸炎なので、特別な治療法もなく、落ち着いたら水分を取ったり、しっかり睡眠を取ったりして時間をかけて治すしかないからです。なお胃腸炎のガイドラインにも記載されていますが、吐き気止めの薬は、必ずしも胃腸炎に効果がないことも多いです。
このような場合は、受診を検討してください。また胃腸炎関連痙攣といって、胃腸炎の症状とともに痙攣が見られるケースもあります。痙攣や意識がおかしい様子があれば、もちろん救急車を呼んでください。
嘔吐したあと、すぐに水分を取らせなきゃ!と思って飲ませると、また勢いよく吐いてしまうことがよくあります。吐いた直後は、どうしても吐きやすい状態が続いているので、吐いた後1時間ほどしっかりあけてから、水分摂取をトライするのがおすすめです。
飲ませる水分は、まだ母乳やミルクしか飲んだことがない赤ちゃんなら、母乳やミルクだけで十分です。必要な電解質(ミネラル)や糖分が含まれているからです。いつもより1回の量は少なめ、かつ、回数を多めにあげると良いでしょう。なおガイドラインにも記載があるとおり、ミルクを普段より薄める必要はありません。普段どおりの濃さのミルクを飲むことで、少しでもカロリーや糖分、ミネラルを摂取することが大事です。
子ども用の経口補水液、イオン飲料もあるので、月齢や年齢に適したものであれば、もちろんあげてください。飲みなれないと、受け付けないお子さんも少なくありません。その場合は、味噌汁やスープなどでも、必要なミネラルを摂取できます。なお食事についても、絶対におかゆやうどんでないといけない、という決まりはなく、普段から食べ慣れたもので、異常に脂肪分が多いものでなければ良いとされています。
吐いたものの処理も大変ですよね。とにかく保護者など大人の方がもらわないように、手袋やマスクをまず装着します。吐いたものが飛び散るなどして、空気から感染することもあるので、まず吐いたものの上に、新聞紙やタオルをかけます。その上から次亜塩素酸ナトリウムの消毒液をかけたあとに、吐物をビニール袋に速やかに入れて密封し、処理しましょう。
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