入園してから、2週間に1回発熱してる…これって大丈夫?熱が4〜5日も下がらないなんて、もしかして重症な病気?解熱剤を使っても下がらない熱は、危険な熱なの?
お子さんが発熱してぐったりしている様子をみると、心配になりますよね。発熱の原因、注意すべき発熱、また発熱時のホームケアなどを解説します。
発熱の定義は色々ありますが、およそ「38度以上」のことを発熱といいます。詳しくは後述しますが、大きく分けると、ウイルスの感染症(いわゆる「風邪」など)、細菌の感染症(細菌性肺炎など)、免疫に関連する病気(川崎病など)、腫瘍(白血病など)などが挙げられます。
最も多い原因は、ウイルスの感染症です。いわゆる「風邪」は、鼻水や咳、発熱などをきたす、ウイルスの感染症をひとくくりにした総称です。迅速検査で調べられるインフルエンザウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなどの他にも、EBウイルスやサイトメガロウイルスなども、発熱が長引きやすいウイルスの代表例です。
次に多いのは、ワクチン(予防接種)の後に発熱するケースです。ワクチンを接種した後は、子どもの体の中で、細菌やワクチンに対する「抗体」が作られます。この過程で、どうしても発熱してしまうお子さんがいます。接種の後、1〜2日間発熱するだけなら何の問題もないのですが、生ワクチン(BCGワクチンや麻疹風疹ワクチンなど)を接種したあとに、その感染症を発症してしまう場合は「原発性免疫不全症」なども疑われます。
通常であれば、生ワクチンに含まれるウイルスは感染力や病原性を弱めたものなので、生ワクチンを接種しただけでは、その感染症を発症することはありません。ただし免疫機能に大きな異常がある場合(原発性免疫不全症など)、例えばBCGワクチンを接種した後に、実際に結核を発症してしまうことがあります。
さらに免疫機能が未熟な乳幼児で、特に注意すべきは細菌の感染症です。風邪の症状が長引くと、細菌による肺炎を引き起こすことがあります。ウイルスと違い、細菌の感染症は重症化したり長引いたり、抗菌薬などで適切に治療されないと、後遺症を残しやすかったりします。
特に重症細菌感染症と呼ばれるものに、細菌性の髄膜炎、菌血症・敗血症、骨髄炎、化膿性関節炎などがあります。食中毒として細菌性腸炎も代表的です。
また、風邪の症状がほとんどないのに発熱が長引く場合は、尿路感染症の可能性もあります。健康なお子さんでも、その時の免疫状態によっては、これらの細菌性感染症にかかることはもちろんあります。
ただし、1年に2回以上細菌感染症を繰り返し、それによって体重増加不良などが見られる場合や、髄膜炎や骨髄炎といった特に重症な細菌感染症を2回以上繰り返す場合は、原発性免疫不全症が疑われます。
こうした免疫に関する病気も、稀ではありますが、発熱の原因になります。原発性免疫不全症よりも頻度が高いもので、川崎病があります。これは全身に血管の炎症が起きてしまう病気です。
若年性特発性関節炎や全身性エリテマトーデスという病気もあります。
1ヶ月ごとなど周期的に発熱を繰り返す場合は、周期性発熱症候群という状態も考えられます。さらに稀ですが、白血病などの悪性腫瘍でも発熱が長引くことがあります。
38度以上の発熱があっても、多くはウイルスの感染症(つまり抗菌薬などの治療法がなく、解熱剤などの対症療法でしのぐしかないもの)なので、緊急で受診しなければいけないケースは多くありません。40度だから危険な熱、ということもなく、名もなきウイルス感染症でも40度近くまで発熱してしまうことがあります。
熱の高さというよりは、下記に示すように、熱が続く期間のほうが、重症度としては重要です。
このような場合は受診を検討してください。
また約10%のお子さんで、熱性けいれんを起こすことがあります。38度以上の発熱が出て数時間〜1日以内に、全身がガクガクしたり、つっぱったりして、意識のない状態が数分間続きます。この場合は救急車を呼んでください。
さらに生後3ヶ月未満など、月齢の低いお子さんは、発熱を認めた時点で受診してください。月齢が低いほど免疫機能が未熟なため、ウイルスだけではなく、細菌の感染症にもかかりやすいからです。
保冷剤などでお子さんの体を冷やすのは、立派な対症療法です。大きな血管が通っているわきの下や、足の付け根を冷やしましょう。ただし冷たい感覚を嫌がったり、機嫌が悪かったりして難しい場合は、無理に冷やさなくても大丈夫です。なおジェルシートに、熱を下げる効果はありません。過去に窒息事故も報告されています。使うのであれば、必ず保護者が観察できる状況で使ってください。
ミルク・母乳や食事などは、基本的に普段から変更する必要はありません。喉が痛く手食べづらいときは、麺類やゼリー・ジュレ、ヨーグルトなど、食べやすいものをトライしましょう。また水分を多く取らせたいと思っても、子どもはなかなか飲んでくれないときもありますね。子どもの体でも「取った水分の量が少なければ、尿の量を少なくする」など、脱水を防ぐ機能が働きますので、あまり量にこだわりすぎる必要はありません。お茶や水などのクリアウォーターだけでは、電解質や血糖が失われてしまうので、糖分や塩分が含まれる飲み物(イオン飲料、ジュース、味噌汁、スープなど)がおすすめです。
またお風呂も特に制限はありません。発熱のせいで疲れている場合は、シャワーで軽く洗うだけ、タオルで体をふくだけで数日過ごしても、問題ありません。
なお、もし処方された解熱剤がある場合は、我慢せず使ってください。熱を下げないほうが早く良くなる、という確固たる医学的なエビデンスはありません。熱で体力を消耗したり、脱水したりしないために、解熱剤は適切に使いましょう。座薬・粉薬・シロップなど、どんな剤形でも効果は同じなので、それぞれのご家庭に合った剤形を医師に伝えてください。
参考文献:
小児症候学89 原著第2版, 東京医学社, 2018年
外部サイト(難病情報センター)へ移動します