入園してから、ずっと鼻水が止まらない。よく耳をいじってるし、中耳炎が心配。
やっと下がったと思ったら、また発熱。中耳炎かもと言われてしまった…。もう何回も中耳炎になっているけど、こんなに繰り返して大丈夫?
中耳炎は外からわかりにくいですし、繰り返すと心配ですよね。中耳炎になる原因、繰り返すときの対応、気づきやすい症状などを解説します。
風邪をひいて鼻水がずっと続いていると、鼻と耳をつないでいる管(耳管:じかん)を伝って、耳にも鼻水が侵入してきます。鼻水の中にはウイルスが含まれています。また風邪によって免疫機能が弱まった状態だと、鼻や耳に普段からひそんでいる常在菌も悪さをします。こうしてウイルスや細菌が原因となって、中耳炎になります。
まず保育園や幼稚園など、集団生活を送っているお子さんのほうが、風邪にかかる頻度が多いので、中耳炎になりやすいです。また特に年齢や月齢が低いお子さんほど、免疫機能が弱く、中耳炎を発症しやすいです。さらに鼻と耳をつないでいる管(耳管:じかん)も短いので、鼻水やそこに含まれるウイルス・細菌が、より耳に到達しやすいという特徴もあります。なお遺伝的な因子もあり、兄弟などのご家族で中耳炎の既往があると、お子さんも中耳炎にかかりやすいです。
意外な原因としては、受動喫煙、タバコの煙も中耳炎を発症するリスクになります。家族全員の禁煙が大事です。
他にもアレルギー性鼻炎で常に鼻水が鼻にたまっているお子さん、おしゃぶりを頻繁に使っているお子さんも、中耳炎のリスクと言われています。
大きく分類すると、中耳炎には2種類あります。
風邪の症状がしっかり見られるときに、みられる中耳炎で、発熱などを伴うこともあります。
風邪症状は落ち着いてきたけれども、まだ鼓膜の内側に膿がたまっている状態です。急性中耳炎にかかった後に、治りが悪く、滲出性中耳炎としてくすぶった状態になる、というのがよくある経過です。
どちらの中耳炎も、多くのお子さんが経験します。急性中耳炎は、3歳までに多いと70%のお子さんがかかります。生後6ヶ月ころからかかりやすくなり、1歳前後でピークに、その後は年齢を重ねるごとに徐々に頻度や割合は低下していきます。滲出性中耳炎はもっと多く、小学校入学前までに90%がかかるとも言われています。
中耳炎を繰り返すお子さんも、少なくありません。3歳までに3回以上、急性中耳炎になるお子さんも40%ほどいます。特に生後6ヶ月や1歳以内など、月齢が低い時期に急性中耳炎にかかると、その後も急性中耳炎を繰り返しやすいとされています。
どれくらい繰り返すと異常なのか、という点は、様々な定義があります。日本の「小児急性中耳炎診療ガイドライン(2018年版)」に則ると「過去6ヶ月以内に3回以上、あるいは12ヶ月以内に4回以上」急性中耳炎にかかった場合は「反復性中耳炎」に当てはまります。反復性中耳炎だからといって、必ずしもお子さんに重大な病気が潜んでいるというわけではありません。
ただし反復性中耳炎を生じる一つの原因に、免疫機能が正常に働かない「原発性免疫不全症」という病気もあります。特に適切に中耳炎の治療をしているのに、なかなか治らない場合や、ほかにも気管支炎・肺炎を繰り返すなどの症状がある場合に疑います。
中耳炎が心配な場合は「耳鼻科」の受診がおすすめです。何歳からの子どもを見てくれるのか、などは医療機関によって異なるので、事前に確認してから受診するとスムーズです。
中耳炎の診断には、鼓膜を、耳鏡(じきょう)という専用の道具を使って診る必要があります。小児科でも耳鏡を置いてある医療機関はありますが、耳垢があると結局鼓膜が観察できないこともあります。耳鼻科であれば耳鏡と、さらに耳垢を取る道具も常設していることがほとんどなので、耳鼻科が良いというわけです。
そもそもお子さんは、どんな症状から中耳炎を疑えば良いのかも、難しいですよね。月齢・年齢が低いお子さんは「耳が痛い」と明確に言えず、ただ耳を引っ張ったり、ただ不機嫌や泣きが続いている、といった場合でも中耳炎のことがあります。また鼻水や発熱が続いているときも要注意です。なお中耳炎の状態がずっと続いていると、耳の聴こえが悪くなることがあります。テレビの音を大きくしないと聴こえない、小さい声で呼びかけても振り向かなくなった、言葉の発達がゆっくりなどの場合も疑われるので受診の目安です。
一度受診した後、薬(痛み止めや、抗菌薬など)を飲んで数日たっても良くならないというときも受診の目安です。あまりに反復する場合は、鼓膜換気チューブといって、鼓膜に穴をあけてチューブを設置する手術を受けることもあります。
中耳炎の多くの原因はウイルス感染です。小さいお子さんにとって、ウイルス感染を完全に防ぐことはできません。年齢や月齢に応じて、無理なくできる範囲(手洗いなど)で十分でしょう。
また肺炎球菌という細菌も中耳炎の原因になりますが、これはワクチンである程度防ぐことができます。無料で打てる定期接種なので多くのお子さんが打っていると思いますが、あらためて母子手帳で、肺炎球菌のワクチン接種ができているか確認してみましょう。
鼻水に対しては、鼻吸いが有効です。中耳炎は、鼻水がずっとたまっていることで、耳に流れ込んでしまうのが原因だからです。医療機関でも行っているところはありますが、お子さんの鼻水はエンドレス。ベストは自宅で、電動の鼻吸い機で吸引できると良いでしょう。
またアレルギー性鼻炎があるお子さんは、きちんと定期受診し、内服薬をしっかり続けることも大事です。アレルギー性鼻炎による鼻水の貯留も、中耳炎のリスクを挙げるからです。さらに受動喫煙も中耳炎のリスクです。家族会員の禁煙は徹底しましょう。
参考文献:
小児急性中耳炎診療ガイドライン(2018年版)
小児滲出性中耳炎診療ガイドライ(2015年版)
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