脊髄性筋萎縮症

脊髄性筋萎縮症とは

脊髄性筋萎縮症とは

脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)は、脊髄の中にある筋肉を動かすはたらきをする運動神経細胞(運動ニューロン)が変化して、手や足の筋力が低下したりや骨、消化器などの体のさまざまな部位に影響が現れる遺伝性の病気です。

脊髄性筋萎縮症の有病率は10万人に1〜2人で男女差はなく、発症率は出生2万人に1人前後です。しかし、脊髄性筋萎縮症はⅠ型〜Ⅳ型まであり、乳児期や幼児期などの子供のころに発症することもあります。そのため、早期発見と早期治療が重要になる病気です。

脊髄性筋萎縮症の原因

脊髄性筋萎縮症は、運動神経細胞生存(survival motor neuron:SMN1)遺伝子の変化が原因で起こります。

SMN1遺伝子は、筋肉を動かすのに必要な運動神経細胞生存タンパク質(SMNタンパク質)を作っています。しかし、脊髄性筋萎縮症の患者さんはSMN1遺伝子の一部を持っていなかったり、この遺伝子を持っていても変化しているためにタンパク質を作り出すことができません。

そのため、脊髄にある運動神経細胞が変化して筋肉が萎縮して、手足の筋力が低下して歩行が難しくなったりつまづきやすくなったり、立ち上がったりすることが困難になることがあります。

脊髄性筋萎縮症の症状

脊髄性筋萎縮症は、手や足の筋力の低下や筋萎縮により動きが制限される病気です。脊髄性筋萎縮症の患者さんの年齢層は幅広いですが、9割以上は16歳未満の子供、8割以上が2歳未満の幼児に発症します。

症状の重症度合いによって以下の4つのタイプに分類されます。

SMAⅠ型|ウェルドニッヒ-ホフマン病

SMAⅠ型は、生後0〜6か月で発症し、次のような症状が現れます。

 首のすわり、支えなしでお座りができないなど成長発達が遅れる
 身体が柔らかくフニャフニャしている(フロッピーインファント、低緊張)
 寝返りなど体の動作が少ない
 哺乳量が少なく、吸う力が弱い
 鳴き声が弱い
 指先が震える
 息を吸うときに胸がへこみ、お腹が膨らむ(シーソー呼吸)

SMAⅠ型は生後数週間で急激に運動機能の低下が見られることがあります。呼吸するための筋肉が弱いため呼吸不全を起こしやすく人工呼吸器などを使った呼吸補助や、嚥下障害のための胃ろうや経管栄養を行うこともあります。

胎児期に脊髄性筋萎縮症を発症した場合では、胎動が少ない、羊水が多くなるなどの症状が見られ、出生後から人工呼吸器による管理が必要です。この場合はSMA0型として区別することがあります。

SMAⅡ型|デュボビッツ病

SMAⅡ型は、生後7〜18か月で発症し、次のような症状が現れます。

 首は座っているが支えなしでは立てない・歩けない
 座ると前傾姿勢になり背中が丸くなる
 手市の動きが少ない、力も弱い
 指先が震える
 成長に股関節や膝関節、手首の関節に制限が見られる
 呼吸不全を合併することもある

SMAⅢ型|クーゲルベルグ-ウェランダー病

SMAⅢ型は、生後18か月以降に発症します。発症時期には個人差が大きく小学生のときに発症したり高校生になって発症したりとさまざまです。SMAⅢ型では、次のような症状が現れます。

 一人で歩行ができるが、進行するにつれて次第に歩けなくなる
 つまずきやすくなる・転びやすくなる
 階段などの上り下りができない、手すりが必要になる
 指先が震える
 走るのが遅くなる
 腕が上がりにくくなる
 思春期前に歩けなくなると背骨が変形する
 X脚になりつま先が外側を向いている

SMAⅣ型|大人になってから発症

SMAⅣ型は、20歳以上の大人になってから発症します。Ⅰ~Ⅲ型に比べて進行はゆっくりですが、症状や経過には個人差があります。

 両足の筋肉が弱くなり転びやすくなる
 筋肉が痩せて力が入りにくくなる
 これまで持てた物が運べなくなる
 起き上がるときに支えがないと立ち上がれない
 手すりがないと階段の上り下りができない
 体の一部が細かく震える
 重たい荷物が持てなくなる

脊髄性筋萎縮症の検査方法

脊髄性筋萎縮症の検査方法

脊髄性筋萎縮症は遺伝子学的検査や血液検査、MRI検査、筋電図検査、神経伝道検査、脳波検査などの精密検査で診断します。

その他にも、一部の地域では新生児スクリーニングで脊髄性筋萎縮症の有無を検査することができます。検査費用は無料ですが、全国で行われているわけではないため発見が遅れてしまう可能性があります。

脊髄性筋萎縮症は乳児のころに発症するタイプもあるため、違和感があればすぐに検査を受けましょう。

脊髄性筋萎縮症びの治療法

脊髄性筋萎縮症びの治療法

脊髄性筋萎縮症はSMNタンパク質を作りやすくする治療薬を使用します。また、この病気によって引き起こされている合併症の症状に対してのケアも行っていきます。

呼吸器、嚥下、体の動きなど必要に応じてサポートする器具や医療機器を使用することで、QOLの向上を図ります。理学療法士や作業療法士などによりリハビリを継続しながら、病気の進行をコントロールしていきましょう。

まとめ

脊髄性筋萎縮症は筋力が低下したり筋肉が萎縮することで日常生活に影響を及ぼす進行性の病気です。この病気は0か月で発症することもあり、小さい頃に発症すると重症化しやすいことが分かっています。そのため、早期発見と早期治療が必要です。気になる症状があればすぐに検査を受けましょう。

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