原発性免疫不全症候群は、先天的に免疫系のいずれかの部分に欠陥がある疾患の総称です。何らかの原因で免疫系に問題が起こると、体を守る生体防御反応が起こらなくなってしまいます。すると、感染力の弱い細菌にも感染しやすくなり、病気になりやすくなってしまうのです。
私たちの体は、体内に細菌やウイルスなどの病原菌が侵入すると、これらを外に排除しようとして防御反応を示します。風邪を引いたときの鼻水や咳、発熱などはこの防御反応によるものです。
原発性免疫不全症候群では障害される免疫や補体の種類により400以上の疾患に分かれます。この原発性免疫不全症候群は感染に対して抵抗力が弱くなるため、肺炎や中耳炎、腫瘍、髄膜炎などを繰り返すのが特徴です。
そのため、難聴や気管支拡張症などの後遺症にも注意が必要です。その他にもがんや自己免疫疾患、自己炎症性疾患、アレルギーを合併しやすいでしょう。
原発性免疫不全症候群の原因の多くは、免疫系ではたらくタンパクの遺伝子の異常です。ここ十数年で、代表的な原発性免疫不全症候群の原因遺伝子が特定されたため、確定診断や治療に役立っています。
ただし、乳児一過性低γグロブリン血症などのようにまだ免疫系が未熟な場合で免疫不全が起こったり、慢性良性好中球減少症のように自己抗体が原因で免疫不全が起こったりする場合もあります。
次の徴候があれば原発性免疫不全症候群を疑います。特に子供は自分で症状や体調不良をうまく伝えられないこともあるため、保護者がこうした徴候に気付くことが大切です。
引用|理化学研究所「原発性免疫不全症候群を疑う10の徴候」
これらの所見に1つ以上当てはまるときは、原発性免疫不全症候群を疑います。特に乳児期では重症化しやすいためすぐに治療が必要です。
重症複合免疫不全症では造血細胞移植を行わなければ、2歳以上までの生存が難しい病気です。そのため、早期発見と早期治療が重要なのです。
原発性免疫不全症候群になると、感染症にかかりやすくなったり、体のさまざまな部位に症状が出たりします。それぞれを解説します。
この病気になると、免疫機能が正しくはたらかないために感染症にかかりやすくなります(易感染性)。病気の種類により障害される免疫は異なりますが、感染症にかかりやすくなるという点は、すべての病気に共通します。
特に気管支炎や中耳炎、副鼻腔炎、肺炎などは繰り返すことが多く、ときに入院が必要になることもあります。
原発性免疫不全症候群では次のような症状や病気が現れます。
● 脱毛
● 髄膜炎・脳炎
● 中耳炎
● 副鼻腔炎
● 口腔カンジダ症
● リンパ節の腫れ
● 肺炎
● 気管支拡張症
● 下痢
● 発育不良
● 発熱
● いぼ
● 皮膚真菌症
● 膿瘍
● 発疹・湿疹
● 毛細血管拡張
子供は感染症にかかりやすいことで知られていますが、これらの症状を頻繁に繰り返すときは原発性免疫不全症候群の疑いがあります。気になる症状があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。
● 問診:感染症の頻度や重症度、家族歴、既往歴、使用している薬の種類
● 血液検査
● 自己抗体検査
● 骨髄検査
● 微生物学的検査
原発性免疫不全症候群は新生児マススクリーニングの追加検査で調べることができます。ただし、特定の地域や施設での実施に限定されるため、早期発見を見逃してしまうこともあります。
そのため感染症を繰り返したり気になる症状があるときは、早めに医療機関を受診しましょう。
原発性免疫不全症候群の治療は、かかる病気やその重症度により異なります。
細菌感染を引き起こす軽度の病気では、抗菌剤を内服します。免疫不全症では、月に1回免疫グロブリンを点滴投与したり、1~2週に1回皮下注射することで感染を予防します。その他にも免疫抑制剤やステロイドを使用します。
重症複合免疫不全症などの重症例では、早い段階で臍帯血や骨髄による造血細胞移植を行います。ドナーが必要になることから、病気の早期発見が望まれます。
原発性免疫不全は、重症例では早い段階で臍帯血や骨髄移植をしなければ2歳以上の生存が難しくなる病気です。そのため、気になる症状があればすぐに病院を受診して治療を開始することが大切です。感染症を繰り返したり、中耳炎や副鼻腔炎を繰り返したり10の徴候があれば、医療機関を受診しましょう。
参考文献
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https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000089892.pdf
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http://pidj.rcai.riken.jp/public_shindan.html
https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/77osy-1ri