ライソゾーム病は、細胞の中にあるライソゾームで機能している酵素が十分に働かないために、本来分解されるべきものが細胞の中に溜まってしまう病気です。先天的な病気で、日本では難病に指定されています。
ライソゾーム病の原因は、先天的に特定の酵素が欠損しているために起こります。不足する酵素の種類によって病名は異なり、現在までに約60種類の病気があります。それぞれ症状は異なりますが、分解されない老廃物が蓄積していくことは共通しており、年齢とともに進行して悪化する病気です。
副腎とは、腎臓の上の方に左右に1つずつあるとても小さな臓器です。外側と内側で役割が異なり、外側の副腎皮質では「糖質コルチコイド」「鉱質コルチコイド」「副腎アンドロゲン」を、内側では「カテコラミン」と呼ばれるホルモンを産生しています。私たちのヒトの体は、数兆個もの細胞で構成されています。この細胞は、心臓や筋肉、目などさまざまな臓器や機能を維持するための基本的な構成要素で、細胞の中には細胞小器官と呼ばれる小さな器官が集合しており、それぞれが異なるはたらきをしています。
細胞内小器官でよく知られているのがミトコンドリアですが、ミトコンドリアと同じく細胞内に存在しているのがライソゾームです。
このライソゾームは、体の中でいらなくなった脂質や糖質を分解するはたらきを持っています。ライソゾームの中には多くの酵素があり、この酵素たちが脂質や糖質の分解を行っていますが、生まれつき酵素のいずれかが欠損してしまうことがあります。すると、老廃物が細胞の中に蓄積してライソゾーム病を引き起こすのです。
これらのホルモンは体の機能維持に必要不可欠で、血糖値を維持したりストレスから守る働きをしたり、体内に塩分や水分を蓄える働きをしています。そのため、この副腎皮質のホルモンがうまく作られないと体のさまざまな機能に影響を及ぼしてしまうのです。
ライソゾーム病は、細胞内小器官のライソゾームの異常によって起こる病気のため、全身のさまざまな臓器に症状が現れます。ただし、生まれてすぐは症状に気付かないことも多く、子供の頃の成長段階で症状が出て病院を受診するケースもめずらしくありません。
ここでは、ライソゾーム病の代表的な種類と症状を紹介します。ただしいずれの病気も症状や現れる時期には個人差があります。
ファブリー病はライソゾーム内で「α-ガラクトシダーゼ A」と呼ばれる酵素が生まれつき不足する病気です。この酵素が不足することで、全身の細胞に糖質と脂質が蓄積します。
子供の頃から現れやすい症状
● 腹痛、下痢、嘔吐などの胃腸症状
● 手足の痛み
● 汗をかきにくい
● 発疹
● 心肥大
● 難聴
成人してから現れやすい症状
● 脳血管障害
● 難聴
● 腎不全
ゴーシェ病はライソゾーム内で「グルコセレブロシダーゼ」と呼ばれる酵素が生まれつき不足する病気です。肝臓や脾臓、骨髄などに「グルコセレブロシド」という物質が過剰に蓄積するため、体にさまざまな症状が現れます。
現れやすい症状
● 貧血
● 出血すると血が止まりにくい(血小板減少症)
● 肝臓・脾臓の腫大
● 眼球運動の異常
● 骨折しやすい
● けいれんを起こしやすい
● 成長障害
ポンぺ病はライソゾーム内で「酸性α-グルコシダーゼ」と呼ばれる酵素が生まれつき不足する病気です。この酵素が不足することでグリコーゲンが十分に分解できず、特に筋肉や心臓、肝臓の細胞に蓄積してしまいます。
現れやすい症状
● 筋力の低下
● 心機能障害
● 呼吸困難
● 発達の遅れ
ムコ多糖症はライソゾーム内で「ムコ多糖分解酵素」と呼ばれる酵素が生まれつき不足する病気です。Ⅰ~Ⅴ型まであり、ムコ多糖が分解できないために、全身の骨や筋肉などの組織に「グリコサミノグリカン」という物質が蓄積します。
現れやすい症状
● 特徴的な顔つき
● 臍ヘルニア、鼠経ヘルニア
● 中耳炎を繰り返す
● 精神発達の遅れ
ライソゾーム病は新生児マススクリーニングで検査することができますが、限定された地域や施設で「拡大新生児スクリーニング」として扱われています。しかし、検査は有料になるため、検査を希望しなければ発見が遅れてしまうこともあるでしょう。
特にライソゾーム病は生まれてすぐには症状に気付かないケースもあるため、成長に伴って症状が現れたときはすぐに検査を受けましょう。
ライソゾーム病の検査では、血液検査のほかに、画像診断、理学検査、ほかの病気との鑑別などを行って診断します。
ライソゾーム病の主な治療法が「酵素補充療法」です。生まれつき欠損している酵素を外から補充することで、症状を改善していきます。
酵素補充療法は、比較的安全性が高いと言われている治療ですが、アレルギー反応に注意しながら長期的に治療を進める必要があります。毎週あるいは隔週で3~4時間の点滴での投与が必要になるため、患者や家族の負担がかかる場合があります。
また、ライソゾーム病を早期に発見できた場合や発症前の場合は、造血幹細胞移植を行う場合もあります。
ライソゾーム病は新生児マススクリーニングに含まれていますが、限定された地域や施設でしか検査を受けられないために発見が遅れてしまう場合があります。また、生まれてすぐは症状に気付きにくいことも、早期発見ができない理由です。成長に伴い、気になる症状があればすぐに医療機関を受診して検査を受け、必要な治療を開始しましょう。
参考文献
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4063
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4061
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