糖質代謝異常症

糖質代謝異常症とは

糖質代謝異常症とは

糖代謝異常症とは先天性代謝異常のひとつです。

先天性代謝異常とは、生まれつき体を構成している糖質やたんぱく、脂質などの代謝機能に異常が見られる病気です。

そのうち、糖代謝異常症とは、何らかの原因で体内で糖質が上手く処理されない状態でさまざまな症状が起きる病気の総称です。

通常、糖質は体内で吸収・分解されたのちに、細胞を作る材料やエネルギー源として利用されていきます。余ったブドウ糖はグリコーゲンに変換して肝臓や筋肉に蓄えられ、エネルギーが不足したときに利用しています。この過程において糖質を代謝する酵素に異常がみられる疾患が、糖代謝異常症です。

代表的な糖質代謝異常症は以下の4つです。

 糖原病:グリコーゲンの合成・分解をするのに必要な酵素が欠損している
 ガラクトース血症:乳汁等に含まれる乳糖を構成するガラクトースの代謝に必要な酵素が欠損している
 遺伝性フルクトース不耐症:果物等に含まれるフルクトースの分解に必要な酵素が欠損している
 ピルビン酸代謝異常症:糖質・脂質・アミノ酸などの生合成や代謝に必要なピルビン酸の代謝に関与する酵素が欠損している

糖代謝異常症は、希少疾患のひとつで子どもに起こる珍しい病気です。しかし、出生時から適切な治療やサポートが必要になるため、一部の疾患に関しては、新生児マススクリーニングの対象疾患になっています。日本では小児慢性特定疾病に指定されており、一部の疾患は指定難病にも指定されています

糖質代謝異常症の症状

糖質代謝異常症は、赤ちゃんが飲んでいる母乳やミルクに含まれる糖質の利用が制限される病気です。そのため、乳児では哺乳力の低下や体重減少、肝腫、黄疸などの症状が見られることがあります。

そのほかにも低血糖によるけいれんや意識障害、発達の遅れ、成長障害、白内障などを引き起こすこともあるため、早期発見が大切です。

代表的な病気の主な症状は次の通りです。

糖原病

糖原病は、乳児健診やかぜなどで近医を受診したときに肝腫大で発見されることも多い疾患です。低血糖で発見されることもあります。最初は軽微な症状でも、成人後に腎臓や肝臓、心臓に病変が出現することもあります。肝型・筋型・混合型によっても症状は異なりますが、次のような症状が特徴です。

 低血糖
 肝臓が腫れて大きくなる(肝腫大)
 筋力低下
 発汗
 錯乱
 けいれん発作
 昏睡
 発育不良
 感染症にかかりやすくなる
 口や腸内の潰瘍
 痛風
 腎結石
 腎不全(11~20歳以降)
 肝腫瘍(成人後)
 肺高血圧症(成人後

ガラクトース血症

ガラクトース血症の新生児は出生時に問題はない場合でも、母乳やミルクを摂取して数日または数週間以内に哺乳不良になります。新生児マススクリーニングの対象疾患となっており、出生後早期に発見し、早期に治療を開始することが重要です。

 嘔吐
 黄疸
 下痢
 重篤な感染症
 白内障
 卵巣機能不全(女児)
 治療の遅れに伴う知的障害

遺伝性フルクトース不耐症

遺伝性フルクトース不耐症は、わずかな量のフルクトース(果糖)やショ糖を摂取するだけでも症状が起こります。ショ糖は一般的な砂糖の97%を占めており、フルクトースとブドウ糖で構成されています。早期診断と乳児期の早い段階で食事制限をすることで重度の症状を予防可能です。

 低血糖
 発汗
 錯乱
 けいれん発作
 昏睡
 黄疸
 嘔吐
 精神遅延
 食欲減退
 発育不良
 消化器症状
 肝不全
 腎障害

ピルビン酸代謝異常症

ピルビン酸代謝異常症の症状は、ほとんどの場合、新生児期〜乳児期の初期に乳酸アシドーシスで発症します。ミトコンドリア異常症の鑑別診断の中で確定されることがほとんどです。診断後も、運動や感染症により症状が悪化して重度の乳酸アシドーシスが起こり、集中治療が必要なこともあります。

 筋力低下
 けいれん発作
 協調運動障害
 重度の平衡感覚障害
 知的障害
 脳の奇形

糖質代謝異常症の検査方法

糖質代謝異常症の検査方法

糖質代謝異常症の検査方法は、疾患にもよりますが、以下の方法で行われます。

 一部の疾患は新生児マススクリーニング
 病歴聴取
 血液検査
 尿検査
 経口糖負荷試験
 遺伝子の解析
 経口糖負荷試験

など

糖質代謝異常症の検査では病気を特定するため、一般的な検査をしたあとに、経口糖負荷試験や遺伝子解析などを行います。

また糖質代謝異常症の一部は新生児マススクリーニング検査の対象疾患となっています。生まれて間もない赤ちゃんのかかとからほんの少し採血して、先天性代謝異常がないか調べることが可能です。

糖質代謝異常症の治療法

糖質代謝異常症の治療法

糖質代謝異常症の治療法の基本は食事療法です。

特に乳児期では、早い段階で乳糖やガラクトースが取り除かれた治療用ミルクを使用するなどの食事療法を行うことで発症を抑えることができます。離乳食以降では原因となる成分の摂取を制限することが大切です。厳しい食事療法を、生涯にわたり継続する必要があります。

また、疾患によっては、ビタミン類投与や各合併症に対する薬物療法が症状の緩和につながることもあります。

まとめ

糖質代謝異常症とは先天性代謝異常のひとつで、一部の疾患は新生児マススクリーニング検査の対象です。早期発見できれば適切な治療により病気をコントロールできる可能性があるため、気になる症状があれば早めに小児科医に相談しましょう

監修医:国立研究開発法人 国立成育医療センター 総合診療部 統括部長 窪田満 先生

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